鴫

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平成24年12月号より
代表近詠
月下
井上信子
コスモスやひとりの家の大き卓
秋深みつつ母の皿夫の皿
−烏瓜しばらくは手にちやほやす 白潮−
ありありと見ゆ先生の鳥瓜
地境の風からすうり披岸花
くぐり戸の白ひがん花命がけ
秋祭お籠りといふ回り番
誰を呼ばむか天神様の祭菓子
学生がかたまつて来る月の下
月下なりむかしは放歌ありしかど
明年の暦をもらふ鴫のこゑ
当月集より

器用に風を捉へて残り紅葉散る
中江月鈴子
小気味よき雨音二百十日かな
山ア靖子
九月来ぬ貝塚伊吹の怒髪にも
橋道子
蟷螂のをりをり軋む蝶番
中村恭子
蓑虫の小耳にはさむ噂かな
荒井和昭
澄む水に物書かぬ手を洗ひけり
風間史子
おのれへの苦笑いくたび九月来ぬ
田村園子
石椅子の窪みまろやか秋蝶来
小林正史
丹誠のひとつのかたち梨届く
田令子
狐の嫁入り一面のそばの花
加藤峰子
おやすみと言へば鈴虫高鳴けり
相良牧人
冬瓜のよんどころなきころがりやう
荒木 甫
畑荒らす猪の都合を言ひし母
石田きよし
夢の師は何時も壮年星月夜
田原陽子
百日紅百日を雨待つてをり
数長藤代
一本松の木霊寝かさる秋澄む日
中山皓雪
山の宿猿酒などとしらつぱくれ
折橋綾子
電子辞書二つ目を買ひ秋高し
椿 和枝
風出でしことの標示機蕎麦の花
佐藤山人
蓼の花橋桁越しの没日かな
原田達夫
草むらに跳ぶものあまた野分後
笠井敦子
月光と沖の白波つるみをり
山本無蓋

寒麦集より

ペンギンの翼広げてゐる秋日
和田紀夫
秋の空ゆらりともせず甚平鮫
久米なるを
秋の虹渡りて家路退院す
森 さち子
少年のペットボトルの蝗かな
大場ましら
啄木鳥の止み人声の戻りけり
成田美代
霧晴れて社に現るる角隠し
箕輪カオル
大見得を切りつつ舞ふや桐一葉
青木ちづる
新涼のひとすぢ透ける砂時計
甕 秀麿
塩飴を頬に厄日の電車中
坂場章子
団栗や土蔵の壁に深き罅
山口ひろよ

羽音抄

朝まだき駅長駅の林檎椀ぐ
藤沢秀永
立錐の余地なき房の黒葡萄
江澤弘子
野の昼は傷つきやすく威銃
齋藤厚子
トルソーの片側暗き部屋九月
山口ひろよ
秋刀魚焼くいまも捨てざる現場主義
成田美代
残暑きびしく戦後派も古りにけり
青山正生
空蝉に銅熱く流さむか
荒木 甫
上弦の月や頬打つ風少し
森田尚宏
露の身を連絡網の端に置く
山本無蓋
吐ききつて声をかぎりにばつたんこ
中島芳郎
蓑虫を解いてみれば山頭火
相良牧人
自らの色に溺るる曼珠沙華
宇都宮敦子
鉄砲百合ずらり並びし長屋門
佐藤山人
白萩やガレキの中に細く咲く
早田路香
じやんけんをせがむ母ゐて秋うらら
藤兼静子
一匙ごと遠き目となるかき氷
大島節子
裏側をことに婚家の墓洗ふ
田部井幸枝
橡の実を拾ひ橡の木探しけり
鎌田光恵
応援の親見て走る運動会
西村将昭
風と来てビルの谷間に赤とんぼ
加藤廣子


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