鴫

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平成24年11月号より
代表近詠
すかいぐれい
井上信子
青みかん便りをしたく旅したく
日暮れつつ大学前の大銀杏
学寮の灯よ遠来のにごり酒
燈火親し袖袂なけれども
なつかしき菜虫よ母の笑ひごゑ
眞昼間のしんかんとして秋の蛇
流麗に横一文字秋の蛇
穴惑すかいぐれいでありしかな
秋の水万事遅れて居りしかど
朝夕の櫻紅葉となりにけり
当月集より

土埃あげて雨過ぐ秋彼岸
中江月鈴子
白潮忌近し夕蝉すきとほる
山ア靖子
陣をなし列なしねこじやらし元気
橋道子
梨食んで栗鼠の眼玉はもり上る
中村恭子
水草の西日に焦げる匂ひかな
荒井和昭
汲み水に色鳥我を忘れをり
風間史子
先送りすること多き髪洗ふ
田村園子
捩花の蕊を散らして老いゆくか
小林正史
追悼の竜胆の束抱へゆく
田令子
干し梅を返すや話かけるよに
加藤峰子
ちぐはぐに生きて今あり凌霄花
相良牧人
しなしなと身をくづすまで焼茄子
荒木 甫
西郷も勝もゐぬ世の蠅叩
石田きよし
正座せる畳に噎せし終戰日
田原陽子
晩夏光哀楽淡く誕生日
数長藤代
板の間の拭きこまれたるお中元
中山皓雪
凌霄の咲き次ぐ家はもう無くて
折橋綾子
炎天へ行つて来ますと男の子かな
椿 和枝
赤紙のきし夢みたる熱帯夜
佐藤山人
児の描く星散らばりて遠花火
原田達夫
産土に着けばひぐらし十重二十重
笠井敦子
朝ぐもり駅の改札遠囃子
山本無蓋

寒麦集より

風蘭の香呼び込む高さかな
大場ましら
遠雷や柩の君にラストキス
宮ア根
スカイツリーから箱庭の街夕焼
村 卯
紺扇二寸開きぬ白潮忌
遠山みち子
Kといふ区画に母の墓洗ふ
坂場章子
甚平の少し猫背も父似かな
大島節子
生きのびて正午の黙祷終戦日
村上すみ子
割り切れぬ思ひ一緒に割る西瓜
濱上こういち
二上りや塀を越えたる凌霄花
青山正生
いなつるび熊出没の注意板
成田美代

羽音抄

葉脈の息づきけはし炎天下
藤兼静子
油照田老の姥にかの日問ふ
村 卯
水門を上まで開けて秋近し
原田達夫
虫籠を難問のごと抱へ来る
相良牧人
取り込んでほとほる処暑の父のシャツ
坂場章子
ものをいふまへに目つむる原爆忌
荒木 甫
手渡しのナイフのひかり今朝の秋
江澤弘子
腕まくる達磨落しの宿浴衣
箕輪カオル
竹風鈴五輪中継かき消しぬ
松林依子
芝居めく科白を口に墓ぬらす
山口ひろよ
もう一度彼の黄見ておく美術展
石田きよし
ゆふやけの天の底なるスタジアム
五十嵐紀子
たまさかの停電もよし星月夜
山本無蓋
手を入れて硬さ確かむ秋の水
和田紀夫
ひと声の呼び水めきし蝉時雨
山本久江
掛け軸のこんと立つなり秋の声
田中涼平
筆談の影を芒に掃かれをり
海老根武夫
炎天を来しそれぞれの顔をして
高森 弘
白髪の漢の似合ふ半ズボン
中下澄江
入り婿のちちの昼寝は畑の中
澤田美佐子


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