鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成24年7月号より
代表近詠
みなみかぜ
井上信子
東国の植田に風のゆきわたり
右はフクシマ山低くみどり濃く
ここに来て心に夏花摘まむかな
栃木いま夏燐々と石を産む
一村のただ一枚の夏の桑
六月へ黒く鎭もる桑畑
一人来て一人去りたり麦畑
くすり屋の多き町過ぐ夏めきぬ
旅終りたれば金魚を飼はむかな
しみじみと旅の終りのみなみかぜ
当月集より

腰強きうどんを啜る走り梅雨
中江月鈴子
乗れさうな一枝北窓ひらきけり
山ア靖子
去年の今ごろはと洗ふ水菜かな
橋道子
ふりむけば眦に火の雉子鳴けり
中村恭子
蠱ひの落花一片掴みけり
荒井和昭
水草生ひ初むあくる日の計少し
風間史子
はちみつを掬ふ木の匙あたたかし
田村園子
点滴のリズムに寝落つ朧の夜
小林正史
春泥や一万八千石城下
田令子
ともかくも春暁を駈け産院へ
加藤峰子
残る鴨にもしあはせといふ瞳のありぬ
前川明子
犬ふぐり侏儒となるまで屈みけり
相良牧人
ようおいでんさつた高山祭かな
荒木 甫
光陰や白寿のひとと花の下
石田きよし
屈まりて吹かせてもらふしやぼん玉
田原陽子
佇めば師の句碑春日差してきし
数長藤代
さざ波の光むらさき猫柳
中山皓雪
粗き雨となりて三月終るかな
折橋綾子
そのかみの空の明るさ仏生会
椿 和枝
急流にきて組替はる花筏
佐藤山人
観梅を後にまはして二人展
原田達夫
芽吹く山遠くに望み里ごころ
笠井敦子
うららけし借景として桜島
山本無蓋

寒麦集より

いくばくの早咲きを褒む花筵
村上すみ子
補聴器をつけぬ不思議な春の夢
中下澄江
水面すれすれ引鳥隊を崩さざる
成田美代
糸口の端をとらへり初蕨
来海雅子
春泥を来て父母の墓に立つ
高森 弘
除染てふ工事始まる花ぐもり
齋藤厚子
恐竜の末裔として囀れり
甕 秀麿
剪定の右下りなる目安紐
平野みち代
ぶらんこや砂場にミニカー忘れられ
柴田歌子
引力のもつ美しさ花吹雪
濱上こういち

羽音抄

人気なきテーラー春の生地見本
原田達夫
春筍やそこはかとなく煮てをりぬ
森 さち子
散る桜風に息つぐことのあり
山本無蓋
店先で眼鏡を洗ふ花疲れ
相良牧人
春鴨の浮遊けむりのやうな糞
山本久江
開花宣言前の桜をまぶしめり
成田美代
初花のフライングならゆるさるる
坂場章子
時折に戯れの鐘花の寺
森田尚宏
末黒野の一樹ひかりの渦まとふ
中山皓雪
うぐひすのこゑのつながる運河かな
荒木 甫
蒲公英の人疑はぬ黄色かな
田中涼平
ゆがみたるままに漂ふしやぼん玉
宮崎根
きぎす鳴く命名の墨乾くとき
海老根武夫
木の芽和中途半端に納得す
齊藤厚子
さわらびの山に拾へり落し角
佐藤山人
ほろ酔の扁平足の寝釈迦かな
中島芳郎
急ぐのは郵便夫のみ花の坂
村上すみ子
芹を切るざくつと風の吹き渡る
飯島風花
春眠の共犯者めくソファかな
橋信一
花筏亀一族に割込めず
長岡きく子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved