鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成24年5月号より
代表近詠
白椿
井上信子
ほつくりと夕づきてをり白椿
白椿人の句のしみじみとして
夕東風やしばらくは置く反故の束
子供部屋とまだ言ふてをり春の夜
お隣りはながき留守なり雀の子
春の風邪何かと人の所為にせり
海遠し山が遠しやチューリップ
ー軒の花屋閉じたり啄木忌
対岸は灯ともしごろや春の坂
風待ちの白木蓮となつてをり
当月集より

人待つでもなしや五月の渚に佇つ
中江月鈴子
身の内の空洞いくつ寒明くる
山ア靖子
紙を切る音ふと止まる雪催
橋道子
斑雪野や溺愛のもの持たざりき
中村恭子
種の違ふ若鳥混じる春の水
荒井和昭
裾つぼまりの紙雛の氏素性
風間史子
新館へ空中廊下春来る
田村園子
食べて寝てをれば日脚の伸びてをり
小林正史
耕の起伏の先に山武杉
田令子
寒月に鍵かけ資料作成中
加藤峰子
冬将軍煮込みうどんといふ馳走
前川明子
日本海冬将軍の十万騎
相良牧人
五センチの雪の東京スカイツリー
荒木 甫
七十億の中の二人や春炬燵
石田きよし
百歳に近づく雛の灯を入れる
田原陽子
立春や土鳩家族に長のゐる
数長藤代
太陽電池きらりと春の立ちにけり
中山皓雪
南無三宝あかぎれ足の荒行憎
折橋綾子
乗込鮒漢落着き失くしけり
椿 和枝
野焼女の帰宅全身きなくさし
佐藤山人
テーブルに日のとどくなり寒卵
原田達夫
冬ざれや瞑れば彼の山河あり
笠井敦子
さきがけてまづ紅梅の風となる
山本無蓋

寒麦集より

薄氷の気泡ゆれゐし下校かな
青木ちづる
ゆりかもめ迎へてくるる里近し
青山正生
白菜をダリの時計のごとく煮る
足立良雄
北おろし筑波嶺の藍深めたり
天野正子
老木に柔らかき棘春ひかり
五十嵐紀子
春立つ日行き先秘したバスツアー
池田高清
勢水を受けて洗顔春隣
猪爪皆子
菜の花忌菜の花貰ひ帰り来る
岩本紀子
紅梅の咲き初めし辺をゆづり合ふ
宇都宮敦子
をみならの翳あをきまで青き踏む
江澤弘子
ベランダの闇にはつしと豆を撒く
大島節子
海光の日のやはらかに黄水仙
大場ましら
さびさびと風韻刻み白椿
奥井あき
寒戻る人肌にせる点耳薬
来海雅子
蕗のたう五臓に春を招きけり
久米なるを
二十四の瞳の庭に菜花咲く
小坂経子
左効きをほめられてをり鍋奉行
齋藤厚子
押して出す泡の石鹸余寒なほ
坂場章子
梅林へほがらなる日のじぐざぐに
佐々木秀子
辞す肩に風花舞ふてゐたりけり
佐藤佐津
引き出しに左手袋三つほど
柴田歌子
空青く四度の凍滝静もりて
高森 弘
家風など子は子で作る木の芽和
田中涼平
久びさの口笛春の来たりけり
田部井幸枝
しまひ湯へ足袋ていねいに洗ひけり
遠山みち子
水洟や溢るるほどにコップ酒
中島芳郎
指運動開いて閉じて納税期
中下澄江
かもしかの眼の高さ遠雪嶺
成田美代
春夕陽フィナーレのごと全身に
濱上こういち
忌を修すことさら大き春の星
平野みち代
逃げ水を追ふに余力のなかりけり
藤兼静子
脛赤き人力車夫や寒日和
藤沢秀永
明日からは学級閉鎖雨水過ぎ
藤野瑛子
田の空にあがる雲雀の高からず
堀岡せつこ
ドレミファソ奏でてをりぬ軒氷柱
松澤美惠子
浮寝鳥安心といふ距離保ち
三木千代
アネモネは緩みなき色ありてこそ
箕輪カオル
ボス猿の歩哨めきたる余寒かな
宮ア根
隠り江のひとつかふたつ残る鴨
村上すみ子
うへしたに折鶴配す吊し雛
村 卯
駅弁の朱の紐とくや春立ちぬ
甕 秀麿
水底に春の光りの届きけり
森 さち子
早く春よ願ひかけたしお日さまに
森 聖子
お早やうに応へて庭の水仙花
森田尚宏
苗字無き志士の墓標や笹子鳴く
安井和恵
セロテープ端見つからず餅こがす
山内洋光
晴々と汽水の河口干潟現る
山口ひろよ
春愁やスカイツリーに節ふたつ
山本久江
菜の花の太きあたりを水切りす
和田紀夫

羽音抄

ほどほどのほどに迷ひつ剪定す
石田きよし
魁の青を灯して犬ふぐり
坂場章子
寒晴の惜しみなき聖鐘にあふ
箕輪カオル
子に析れてまとまる話草の餅
笠井敦子
入日色機の経緯に島の春
山□ひろよ
海に灯の浮び寒九の雨となる
平野みち代
冴返る万のいのちの忌の近し
相良牧人
福は内とは欲深き言葉かな
山本無蓋
父眠る村に涓涓山笑ふ
宮ア根
風呼んで風の真中に寒の滝
村 卯
蜆売り川の水ごと売りゆけり
椿 和枝
水草生ふ歪む日のかげ水の影
原田達夫
凍滝の裏ころころと水の音
大場ましら
大寒の天地替へせる漬菜かな
来海雅子
節介な気象予報士地虫出づ
足立良雄
一つ来てまた一つの輪春の鳶
森田尚宏
人生の節目は起点梅真白
猪爪皆子
春雨や無骨な文字を手帳に見
天野正子
水門の大きハンドル春隣
三木千代
受験子の絵馬押し込めり溢る中
村上禮三


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved