鴫

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平成24年4月号より
代表近詠
森閑と
井上信子
冴え冴えと裏日本といふ日本
冬の夜の更けたればくる父の声
オリオンや窓集りて道となる
冬深し目覚めては炊く白き飯
含め煮のさみしくはなき小蕪にて
雪晴れの鴉太りて来たりけり
森閑と老いつつ照りつ冬椿
悼み文書くささめきて冬の川
旧友
ストールの黒の相似ることをかし
晩婚でありしことなど冬帽子
当月集より

なるほどと思ふときある佛の座
中江月鈴子
足挙げて曲げて廻して初明り
山ア靖子
葉牡丹の百の沈思に日のおよぶ
橋道子
寒雀今日も来てゐるだけのこと
中村恭子
水浴びの寒九ゆさぶるつがひ鳥
荒井和昭
日の沈むころ水仙を束に買ふ
風間史子
枯菊は焚かれ支柱は抜かれけり
田村園子
ごまめ食む母の家系は子沢山
小林正史
公園に木々の香満つる初氷
田令子
母となる吾子の未来や小豆粥
加藤峰子
千両を今活けず置く在るままに
前川明子
豹柄の女紛るる年の市
相良牧人
鶺鴒の彳亍跳ねる氷面鏡
荒木 甫
初泣の主役をつつむ初笑
石田きよし
初夢の向ふ岸から夫の声
田原陽子
去年今年命繋がる管数多
数長藤代
去年今年句読点なく川流る
中山皓雪
病癒えし漢の肩に淑気満つ
折橋綾子
柚子の黄の数ひかへ目に冬至風呂
椿 和枝
凍てしまま挑み手のなき力石
佐藤山人
雪原ののつぺらぼうは眩しかり
原田達夫
枕頭の灯を消してより霜の声
笠井敦子
鉢巻の蜑の囲める缶焚火
山本無蓋

寒麦集より

小吉のまさに身に添ふ四日かな
来海雅子
腕組みを解きくつさめを待つかたち
齋藤厚子
車椅子の母とゆつくり寒椿
濱上こういち
ほのぼのと腑に落ちにけり薺粥
中島芳郎
まなかひに聳ゆ筑波嶺初日浴ぶ
大場ましら
凍豆腐送らるかすか日のにほひ
遠山みち子
面なんぞ頭の上に千葉笑
森田尚宏
松坂牛従へ堂々たる白菜
甕 秀麿
同慶の花束授受や初屏風
村上すみ子
木菟啼くやカルピス色の雲流れ
平野みち代

羽音抄

震災の余熱の籠る初日記
濱上こういち
木漏れ日を引張つてゆく着膨れて
成田美代
先手打つべし鯛焼は頭から
平野みち代
メモ飛ばす投扇興のやうにかな
相良牧人
初凪のいろを深めて母の郷
江澤弘子
早ばやと膝の笑ふも淑気なり
村 卯
絵表紙の捨つるに惜しき初暦
甕 秀麿
数へ日や電脳街の両替所
山本久江
冬耕の農夫農婦に会話無し
山本無蓋
初御空幌全開に乳母車
青木ちづる
梟のこゑも納めし杣の棺
佐藤山人
初買の親子とにかく揉めてをり
久米なるを
あららぎの風鐸の鳴る初景色
村上すみ子
冬浪はいつも暮色よ眼鏡拭く
海老根武夫
カシミヤの手袋ぬくし嫁ぬくし
柴田歌子
雪掻きの一枚脱いで佳境なり
猪爪皆子
寒紅やスプーン取り落して響く
齋藤厚子
父と子の年酒和洋に笑まひけり
岩本紀子
畏みて母を噛ませり獅子頭
五十嵐紀子
降りしきるゲリラ雪をばカメラぜめ
畠山昭司


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