鴫

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平成24年2月号より
代表近詠
生粋の
井上信子
生粋の男神なり七五三
花嫁を珠と囲むよ木の葉降り
隅々に明神の反り冬進む
風冴ゆる澄まず穢れず神田川
クラス会二句
老くらべせり静かなる冬帽子
冬薔薇帝都炎上おのおのに
夢ならぬ野雉子の添ひて入りし枯
柿主の年取られたる柿日和
湯島まで行く初冬の夕焼なか
楷もみじ廟に人居て声もれず
川添ひにして坂がかり木の葉髪
肉落ちの野雉子の行けり露の原
当月集より

十二月八日六時に目覚めけり
中江月鈴子
かつしかの風のおろおろ冬はじめ
山ア靖子
からころと来て初冬の音となる
橋道子
晴ればれとたとへば菊花展の菊
中村恭子
ふところの団栗なにか孵へりさう
荒井和昭
紅葉かつ散る柔らかき靴音に
風間史子
コスモスの揺るがしてゐる落暉かな
田村園子
分けへだてなく日の当る日向ぼこ
小林正史
クッションをあちこち並べ神の留守
田令子
笠森や小春を駆ける女坂
加藤峰子
形悪しき柚子ばかりに惹かるる日
前川明子
地団駄の採れぬ高さに烏瓜
相良牧人
小春日や鬼の歯のごと金ブリッジ
荒木 甫
鴨の陣歩哨のごとき鷺の首
石田きよし
新米を強くやさしく握るなり
田原陽子
桜紅葉美しき色より散つてをり
数長藤代
境内に銀杏拾ふ御講凪
中山皓雪
身に人むや児の命日の卵焼
折橋綾子
飢う記憶持たねど俄かなる寒さ
椿 和枝
石標に江戸へ五十里ゑのこづち
佐藤山人
色鳥や貫の木かかる不老門
原田達夫
霜降の紅茶にたらす生姜汁
笠井敦子
ふくろふの声が合図の密か事
山本無蓋

寒麦集より

白樺の低き高きに蔦紅葉
堀岡せつこ
いちやう黄葉脇往還の曲り角
村 卯
ココア注ぎ分くる夜寒のマグカップ
坂場章子
狛犬に悪相なかり小六月
久米なるを
四分の一の白菜持て余し
天野正子
整然として唐松の黄落期
箕輪カオル
釣果なき魚籠ぶらぶらと小六月
甕 秀麿
風を裂き風をからめし破芭蕉
大場ましら
秋うらら近くて遠き歯科医院
松澤美惠子
ささやきは菊人形の一人言
藤兼静子

羽音抄

灯火三千月ひとつ星ひとつ
山口ひろよ
古靴を出船に揃へ冬隣
藤兼静子
柿を剥く子規のつむりの尖りやう
荒木 甫
梟の首の収まる微調整
相良牧人
選ばれて空をとほくに木守柿
甕 秀麿
ゆるやかに岬の尖る冬はじめ
矢田 涼
息災の褒美のやうに木の実降る
箕輪カオル
冬苺女系家族の内緒ごと
平野みち代
目深にすさうかけふより冬帽子
石田きよし
立冬や行程かへることもなし
遠山みち子
鳴り響くケトルに返事神の留守
青木ちづる
歩を止めて傾聴となる冬の鳥
山口輝雄
棚の本置換へてみる小春かな
田中涼平
着ぶくれて出奔するも儘ならず
宮ア根
毛糸編む只今水平思考中 
山内洋光
去年よりうんと減らして賀状買ふ
中下澄江
秋桜瞳の中の遠いいろ
濱野照美
待ち合せ場所は小さきツリー前
和田紀夫
秋桜といふ平凡をみつめをり
南沢房子
木こりなりし父の正装ほほかぶり
蒲野哲雄


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