鴫

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平成23年6月号より
代表近詠
苗売
井上信子
曲りくる音のをはりと言ふ夜風
音深し門柱に乗る隣りの猫
芝刈つてをりしがふつと灯りけり
苗売に逢ひたくて来し寺の前
今年また不参に過ぎし御忌の寺
衣更へて門前仲町とおもふ
夏めくや手帖の中の明後日
二日三日誰も来ぬ夜の若竹煮
うつの日の昔はありし金魚鉢
夜そこに置かれてをりぬカーネーション
当月集より

先頭で花散る坂を下りけり
中江月鈴子
魂を継ぐかに薔薇芽立ちにけり
山ア靖子
斑雪嶺や水琴窟に音晴るる
橋道子
オルゴールにも猫足の光悦忌
中村恭子
春の芽をちやほやしてゐる男かな
荒井和昭
荒鋤きの田にひつたりと春の水
風間史子
雛飾る三人官女以下端折る
田村園子
竹林を抜けて出合へり春の虹
小林正史
春苺ふるさとをふと思ひけり
田令子
春ショール言葉をつなぐ時触るる
加藤峰子
羽根いちまい使ひ切りたる都鳥
倉持梨恵
ぼんぼりや耳を澄ませて雛かな
前川明子
相槌の一歩遅れし日永かな
相良牧人
大いなる早春の地震合掌す
田原陽子
二月逝く朱肉色濃く鑑査印
数長藤代
三月十一目見知らぬ人と抱き合へり
中山皓雪
少年のぽつんと居りぬ雛の前
折橋綾子
ほろほろと花舗のバケツの桃の花
木下もと子
寒冷紗から春キャベツ出でられず
椿 和枝
甘藷床をしかと踏込み非常勤
佐藤山人
鳥曇母の目の色あさきかな
原田達夫
佇めば芽吹きの音につつまるる
笠井敦子
陶然と潮騒を聞く春の雲
山本無蓋
淡雪の夜紡ぎ出す一行詩
石田きよし
春霞浮きつ沈みつ筑波山
荒木 甫

寒麦集より

三月や視野に小さき鈴を吊る
来海雅子
菠薐草ゆでる間も耳朶の揺れ
森さち子
春光やカーテンはパステルカラー
箕輪カオル
記念樹は大樹ばかりや卒業歌
安井和恵
笛と輪の鳶の宴や春岬
甕 秀麿
空にまだ余白ありけり芽吹山
成田美代
百歳へ送りし文と雛あられ
村上すみ子
梅日和母七七の忌の日なり
村 卯
夫の椅子わたしの机ヒヤシンス
山□ひろよ
啓整やダンベルをどらせ歩きをり
松澤美惠子

羽音抄

花菜漬空気になれぬ老二人
田中涼平
啓蟄や脚注迫る拡大鏡
荒木 甫
邪馬台国ここぞと麦の青みをり
村 卯
初蝶を追つて博士の老いにけり
遠山みち子
土地勘のなき町梅の香のはうへ
濱上こういち
焼きたてをお手玉にせり草の餅
山本無蓋
それぞれに渾名をもらふ残り鴨
石田きよし
首ちぢめポストを覗く花菜雨
佐々木秀子
湖の波殖やしてゐたる帰雁かな
海老根武夫
春の地震「叫び」のやうな人の顔
原田達夫
ありありと影の二つや雛屏風
山口ひろよ
挑咲くや引越しの荷に一輪車
平野みち代
白れんを見つめ続ける月のゐて
久米なるを
追うたでもなきに春蘭隅に咲く
岩本紀子
畑一枚漢詩に見ゆるはだれ雪
飯島風花
思ひきり巨き酸つぱし春いちご
松林依子
春の地震に動き始めし古時計
中下澄江
ひこばえやちちは不器用はは器用
堀岡せつこ
春の水小さく揺らす猫の舌
森井美惠子
相談と言ひつつ惚気春うらら
安井和恵


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