平成23年5月号より
代表近詠
夜の雨
井上信子
母が来て寄せてゆきたる春落葉
母がゐて春を惜しみぬ夜の雨
白菜を漬けざりし冬送るなり
月遅れ本の親しき春夕べ
三月を啼かぬ鴉に日の差して
東日本震災
櫻三分その夜をしんとしてゐたる
一便を待つ木瓜のただ白かりし
雪まぜの雨となりたる電話なり
冴えかへりつつ佛飯は日に一度
百年の家紫木蓮白木蓮
流速のはげしさ春の闌くるなり
百千鳥赤子の頬の神代より
当月集より
寒麦集より
羽音抄
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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