鴫

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平成23年4月号より
代表近詠
土鳩来て
井上信子
土鳩来て西行法師の忌なりけり
どこよりも口つつましく春の鳩
春落葉ゆふべ確かに眠られず
お隣りは大きな空き家うす氷
冴返りつつ大人しき男子寮
放歌なき寮をつつみて春夕焼
亡きひとの中の亡き人水草生ふ
たんぽぽを行く地平を行くやうに
妹の数へて五人猫柳
カレー屋に孫と座りぬ風光る
雲白しとは空青きこと春休
紅梅の散りきつてより夕間暮
当月集より

中腰で寒の牡丹をのぞきけり
中江月鈴子
一打して空となりけり除夜詣
山ア靖子
草石蚕をつまめば父の武勇伝
橋道子
半島の風花こはれやすきかな
中村恭子
杣判のつきし榾なり峡谺
荒井和昭
小千鳥の一斉に去り杭乾反る
風間史子
蟹歩きして選り好むおでん種
田村園子
水仙をかざしてバスを待ちにけり
小林正史
松過ぎの昼より休暇戴きぬ
田令子
壮年や海を焦がして初日出づ
加藤峰子
冬紅葉空に琴線ありにけり
倉持梨恵
山を出づ冬そのものの顔となり
前川明子
恵方とて水上バスで遡上せり
相良牧人
七草や七情うすれゆく怖れ
田原陽子
総勢といふも三人煤払ふ
数長藤代
余生にはあらず八十路の霜柱
中山皓雪
さざ彼のきらめく川面大旦
折橋綾子
ゆつたりと建機居並ぶ初御空
木下もと子
初晴を北の漢の言ひにけり
椿 和枝
初鶏の一声村を始動さす
佐藤山人
新生「鴫」二十五号や去年今年
原田達夫
湯気立てて夜のひとり居は繭のごと
笠井敦子
女正月手作りハムを厚切りに
山本無蓋
冬麗の水ゆるゆると墓碑の師へ
石田きよし
ほのぼのと目覚めのゆまり御慶かな
荒木 甫

寒麦集より

初筑波一碧の空ゆるぎなし
箕輪カオル
初景色真摯に渡る青信号
久米なるを
古日記以下同文のやうな日々
濱上こういち
買初は打出の小槌持つうさぎ
松澤美惠子
石段の笑くぼ数へつ初詣
山内洋光
風花やチャペルの中に吸ひ込まる
遠山みち子
喉元へ冬ざれのおと眼鏡拭く
齋藤厚子
初日さす犬吠崎の青畳
安井和恵
戸をたたく凩たれも連れて来ず
山口ひろよ
反りかへる筆を滑して寒の紅
青木ちづる

羽音抄

良きをとこ皆村を去る雪女
宇都宮敦子
林床の新雪に日の斑なり
田令子
寒の水青き地球を一掬ひ
相良牧人
人声のして裸木の明るさよ
青山正生
年の暮フランス鍋の奉仕品
山口ひろよ
求愛の鳩の首ほど着ぶくるる
山本久江
餅を焼く己が身の丈減らしつつ
成田美代
王様の耳を映せり冬の水
甕 秀麿
現し世にもどるとき独楽赤と青
齋藤厚子
よそゆきの声笑はれて初電話
平野みち代
ぽつぺんを思ひ出し笑ひのやうに
木下もと子
都鳥ブーメランより先に下り
猪爪皆子
灯さねば風邪を引くよと思ひながら
田部井幸枝
去年今年地軸いささか傾きぬ
荒木 甫
薺打つしどろもどろのめでたけれ
中島芳郎
堪忍の袋の破れ冬怒濤
青木ちづる
初日さすティアラの如き波頭
村上禮三
反物のままに年越伊予絣
宮崎根
葉牡丹のオセロゲームは白優位
久米なるを
初みくじ大吉にある但書き
三木千代


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