鴫

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令和4年7月号より
代表近詠
伊八の海
加藤峰子
菜の花にそまる伊八の海たひら
まう一周歩く白蓮さびぬ間に
春は曙表情筋のストレッチ
そよそよと火焔ほぐるるチューリップ
春大根おろす会話をするやうに
若蘆の音のさりさり伸びにけり
花ふぶき遊び足らざる駄々の声
首横の譲らぬ自我よゴム風船
傾ぎては鰭の直進水草生ふ
萵苣ちぎる竿屋口上響きくる
名誉代表近詠
「いや」
橋道子
パン粥を吹いて八十八夜
降りぐせの空をうらまず薔薇真紅
とりわけてピアスの似合ふ更衣
すぐ「いや」と言ふ子の連射水鉄砲
午睡ともちがふ麻酔の真空時
新樹光痛みを数で示せとは
病棟の静寂をかすめ夏うぐひす
当月集より

投票所まで標のやうに黄水仙
山ア靖子
耳鳴りに似たる春蟬聞き留む
荒井和昭
顎引いて弱音飲み込む雪やなぎ
田村園子
蕾にも滴となりて花の雨
田令子
再会は口をすぼめてチューリップ
相良牧人
地震津波疫病戦火花万朶
荒木 甫
楽観の招く惨禍や春嵐
石田きよし
改札の音なく開く花の昼
成田美代
花鳥の疫病籠りの吾が庭に
山口ひろよ
師と友に恵まるる余生ライラック
中山皓雪
学校に羊一匹やへざくら
箕輪カオル
ひまはりの種蒔く戦火憂ひつつ
平野みち代
春惜しむ綿は絮へと姿を変へ
甕 秀麿
晩紅の色を敷きたる落椿
宇都宮敦子
花冷えやマトリョーシカの顔曇る
坂場章子
あらせいとう潮目確かに安房の海
和田紀夫
公園にゆるキャラクター植木市
鎌田光恵
雲雀野や避けてゆくなり落とし穴
原田達夫
笑ふ山三つ四つ抜けて日本海
松林依子
花筏寄り合ひながら解けながら
山内洋光
津軽囃子花天蓋の表堂
奥井あき
シャッターの電動工事春うらら
数長藤代
さへづりに色ありとせば虹色に
笠井敦子
マイク持ち左運転若葉坂
田部井幸枝

寒麦集より

蛙子の尾鰭落とす日問はれけり
土門なの子
サブロクの工事看板燕来る
川瀬康
赴任地を風に任せる柳絮かな
西村とうじ
旧道に並ぶよろづ屋種袋
渥美一志
いつも一緒蛙解剖せし時も
宮川智子
村人の造りし街道花盛り
三木千代
囀の静寂を満たす溶岩の島
中村久一
戯れを超えて荒ぶる雪柳
森しげる
がむしやらに働きました巣立鳥
宮ア根
竜天にスカイツリーの入場券
足立良雄

羽音抄

諸葛菜折り合ふことば探さねば
箕輪カオル
稜線のゑくぼのやうに山桜
西村将昭
両腕で丸して鰆船帰る
甕 秀麿
掬ふたび水やうかんの立ち直る
立花光夫
初恋は手にかたつむり載せたる子
山内洋光
軽トラに干さるる若布浜の宿
松林依子
乱雑な机の秩序小米花
足立良雄
花吹雪嘴広鸛の動きかな
宮ア根
新社員大志忍ばせ黒鞄
尾川美保子
君も僕もオレンジの靴春駆ける
島田喜郎
殿にゐて蒲公英の絮を吹く
齊藤哲子
永き日の発声練習つつがなし
宮川智子
抜け道の旧家の一本桜かな
中下澄江
春暁や指に始まる血の目覚め
野口和子
止まる度ホーム窺ふ初出社
土門なの子


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