鴫

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平成29年9月号より
選者近詠
夏野まで
橋道子
涼しくてピーターほどの兎波
浜昼顔真夜は匍匐を解くならむ
世をなげく男の噎する心太
髪洗ふ菜をあらふやう扱きつつ
嵩うすき紙人形や梅雨の月
湾かけて横雲となる送り梅雨
白南風や雲に交差といふは無し
炎帝の長考に島乾くなり
氷菓舐む明日は入所の兄とかな
岐路隘路あればこそ行く夏野まで
当月集より

蜘蛛の囲の真中蜘蛛が占領す
中江月鈴子
山望む誕生の日の草清水
山ア靖子
日に透きし脱ぎそこなひの竹の皮
荒井和昭
焦心を濾過するここち新茶酌む
田村園子
夏シャツの手触り軽く週初め
田令子
泉汲むペン胼胝白くゆらめけり
加藤峰子
冷し酒分かちてよりの絆かな
相良牧人
あぢさゐの白よりいろのうつろひの
荒木 甫
北斎も見惚れし朱夏の富岳かな
石田きよし
一望の初夏の空潮の色
成田美代
みすずかる嶺の白たへ田植時
山口ひろよ
松籟を潮騒と聞く夕端居
中山皓雪
うす墨の空に泰山木の花
箕輪カオル
海見えるまでの山路や夏うぐひす
平野みち代
白南風や島の楽器は木を削り
甕 秀麿
夏野菜の色にふくらむレジ袋
宇都宮敦子
苔の森ルーペの下の別世界
山本無蓋
漆黒の翳も乱さぬ黒揚羽
田原陽子
十薬や詰め込みすぎし口上書
数長藤代
初夏や大正モダンの少女立つ
原田達夫
申訳程度に咲いて夏の藤
笠井敦子
朝顔の二葉ばんざいの返事
田部井幸枝
カルシウム分を運ぶや蟻の列
齋藤厚子

寒麦集より

下総の外れに九年パナマ帽
木澤惠司
「考へる人」考へてゐる夏木立
奥井あき
高空に残る青梅父の色
青山正生
笹に乗せ鮎一匹をもらひけり
山内洋光
蟻たちよその行列は共謀ぞ
中島芳郎
かけ引は捕手の手の内蟻地獄
足立良雄
発熱や過失のごとき夏の風邪
来海雅子
泰山木天下分け目の花開く
伍島 繁
睡蓮のつぎつぎ亀を躱しけり
西村とうじ
一合の米炊く業を特技とす
藤兼静子

羽音抄

網焼きのせんべいの反る青葉潮
鎌田光恵
焼酎や丙種のわれは生き残り
中島芳郎
十薬や言葉を痛く聞いてをり
坂場章子
潜ること生涯の夢あめんぼう
甕 秀麿
十分に空引き寄せて射る草矢
和田紀夫
夏帽を膝に抱きたる映画館
箕輪カオル
滝谺青き空より来たりけり
齋藤厚子
身の奥に太古の記憶苔茂る
宇都宮敦子
潮騒や照りを重たく夏木立
成田美代
紙魚の道たどり心に届く文字
足立良雄
取つときの書はまだ開けぬソーダ水
松林依子
郭公に応ふ口笛未完成
村 卯
草笛を吹くにひとつの咳払ひ
齊藤哲子
花栗や転居の家族子だくさん
左京信雄
五月雨や水輪に終へし長き旅
西村将昭
走り込む石竜子茗荷のジャングルへ
岩本紀子
九十九髪金魚太りてゆくばかり
五十嵐紀子
父の日やいぶし銀には遠くをり
橋信一
タップダンスホールの窓辺金魚鉢
村上禮三
青簾一年ぶりに大の字に
小宮智子


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