代表近詠
はがねの嘴
加藤峰子
書に栞挟むがごとく寒明くる
しぶく水摑めば春のやはらかし
風青むまで蠟梅の磨かるる
葉牡丹の渦に仕舞うて苦き恋
紅梅の中の真青な空を撮る
うすらひの鯉の宮殿のぞき込む
寒鴉はがねの嘴の嗤ひだす
瀬頭の河口の蒼や鳥雲に
つぎはぎの工事サドルの弾む春
饒舌な速達の文草萌ゆる
名誉代表近詠
進級
橋道子
鳥曇ボルシチの国憂ふれば
蕗味噌に飯のすすんで泣きたくなる
豆煮るや夫の朝寝をゆるしつつ
おぼろ夜の封書を量るミニ秤
ぶらんこを漕ぐたび大気凹まする
ミニカー期より恐竜期へと進級す
鳥の糞に種子の四粒あたたかし
当月集より
寒麦集より
羽音抄