鴫

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平成28年9月号より
代表近詠
夏深し
井上信子
八月や風車のごとく鴉来て
夏深し鴉親しき振りをせる
朝日まづ湯殿を射して夏深し
皆旅にをり青芝にあまねき日
擬宝珠の花の念念風こもる
音立ててをりし擬宝珠の花終る
夏終る一筆箋の便りして
選者近詠
耳目
橋道子
草の葉に草の葉色のこがねむし
働いて明るき寡黙梅青し
心配をたがひに言はずさくらんぼ
青木賊わたしの耳目研いでおくれ
忍野八海方面三句
闇抜けて来し流水に夏の音
橡の花底のつながる池と池
同室の密度にさらす素足かな
当月集より

雲幾重にも浮き上がり夕焼けす
中江月鈴子
つなぐ手のあり六月の樹海かな
山ア靖子
幹叩きつつ廻りたり樟若葉
荒井和昭
メロンに刃声繕ひて供しけり
風間史子
川べりの樹下ハンカチを敷き合へり
田村園子
水郷や植田に雨のやはらかし
田令子
屹立の刺のうす紅たら若葉
加藤峰子
青鷺の投網打つごと降り立ちぬ
相良牧人
能つ引きてマイナス金利茄子の花
荒木 甫
渓流の透けたる底に緑さす
石田きよし
老鶯や水を濁して水渡る
成田美代
夏の陽の蒼く降り積む池の底
山口ひろよ
山裾の規矩の正しき植田かな
中山皓雪
玫瑰や砂礫をわたる水の音
箕輪カオル
夏草や芭蕉立ちしはこの辺り
平野みち代
通訳はロボットなりけり青嵐
甕 秀麿
七変化先づは乙女の相なせる
田原陽子
遊船や津波の沖に逃げし船
数長藤代
城山の要害翔けるほととぎす
佐藤山人
青葦のゆるゆるうねり眩めり
原田達夫
サングラスかけて異界に入りにけり
笠井敦子
民宿の窓一杯に夏の湖
山本無蓋
バス前席五月の富士が移動する
田部井幸枝
コピー機を飛び出す紙や夏来たる
齋藤厚子

寒麦集より

玉葱の小さき地球吊しをり
山本久江
鯵捌く為の砥石を洗ひけり
宮ア根
姫女苑通りすがりに抜きもして
森田尚宏
薔薇剪るかきらぬか午後となつてをり
青山正生
大空に富士ある安堵夏来る
三木千代
緑蔭のベンチはいつも自由席
山内洋光
和太鼓の講師は妊婦ねぶの花
松林依子
蓮の葉をかざして河童無一物
中島芳郎
梅花藻の流れ螢の夜とならむ
来海雅子
鷗外と太宰の墓や実梅落つ
中下澄江

羽音抄

ふるさとや種たのもしき枇杷熟るる
宇都宮敦子
空中に道を見つけし燕の子
濱上こういち
さすらひのこころもちとの夏帽子
中島芳郎
山百合や転ばぬ隠れ切支丹
村 卯
夏風邪のくすり死ぬまで飲む薬
石田きよし
漱石の恋に始まる夏期講座
藤沢秀永
水面に頭ぶつけて目高群る
原田達夫
四十雀樹海を泳ぎ行けたらば
来海雅子
てのひらに水丸くして枇杷洗ふ
田令子
甚平を抱く甚平ピザハウス
中山皓雪
補助輪の自転車置かれ茅花原
成田美代
陶枕のかたさを云ふに疲れけり
遠山みち子
嘘つくに饒舌といふソーダ水
齋藤厚子
草笛の鳴らぬは草のせゐにして
平野みち代
顔洗ふ噴井の水の錆臭し
和田紀夫
枇杷すする淡き明りを皿に置き
甕 秀麿
母の忌の近し実梅を椀いでをり
齊藤哲子
らんらんと花栗雲に乗るつもり
佐々木秀子
あの子にも晴るる日は来る花胡瓜
岩本紀子
肩車そのまま茅の輪くぐりけり
森 しげる


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