鴫

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平成26年6月号より
代表近詠
行春
井上信子
行春の大枝の揺れ定まりぬ
たんぽぽのひとり長けをり朝の風
玉砂利を買ふ夏めくと思ふ朝
玉砂利の袋を積みぬ春深し
百年の農家に隣る竹落葉
櫻しべ降る来信の遙かより
葉櫻の道のかたへに住み古りて
露地の風ゆるく抜けゆく荷風の忌
当月集より

藤棚の隙間を風が埋めにけり
中江月鈴子
度量もて春や煉瓦の深谷駅
山ア靖子
吸ひ込むか吸ひこまるるか梅の空
橋道子
蟇穴を出て作りたる片靨
荒井和昭
弥生野につまづき靴を叱りけり
風間史子
棒切れを浮き上がらせてはこべ萌ゆ
田村園子
生あくびして菜の花の中にをり
小林正史
卒業の指に確かむ書架の影
田令子
囲みては病棟の雛誉めたたふ
加藤峰子
みちのくの光の海を鳥帰る
相良牧人
手間賃のごとき納税還付金
荒木 甫
人を恋ふための灯や雛飾
石田きよし
山際を確と囀たてつづけ
成田美代
春の水長命寺へと回り路
山口ひろよ
掃除機の音ひそめたり雛の前
田原陽子
青竹の四つ目垣てふ繕へる
数長藤代
石段の雛立ち上がる雨もよひ
中山皓雪
名の苑の観るため丈の蕗の蓋
折橋綾子
春光の和らぎの先風疾し
椿 和枝
虫出しの雷に潰れし法事菓子
佐藤山人
日に映えるエルイーディーと辛夷の芽
原田達夫
間紙の古くなりたる雛納め
笠井敦子
期待して期待外れの野焼かな
山本無蓋
春一番ひとりでに足燥ぎ出す
田部井幸枝
水仙の切り口涙噴き出せり
齋藤厚子

寒麦集より

さるぼぼの絣のべべやあたたかし
平野みち代
種薯植う男爵様に灰塗し
森田尚宏
陽炎の先に前方後円墳
和田紀夫
白梅や手摺に頼る人続く
宮ア根
両岸に蛇龍伏せたる春の川
山本久江
川波へ春光しろがねに砕け
坂場章子
一駅を歩く歩幅のあたたかし
中下澄江
光悦寺垣の隙より黄蝶かな
宇都宮敦子
まつすぐに暮らして小さし梅日和
松林依子
朝寝して鴉権太に起こさるる
中島芳郎

羽音抄

逆光の恋の櫂先猫柳
中山皓雪
三月の脇を締め研ぐ出刃庖丁
荒木 甫
茅屋の長者心地に木瓜の花
中島芳郎
朧なる孤峰の裾も朧なる
成田美代
ほほざしと云ひ得て痛し荒き藁
藤兼静子
ヒヤシンス水耕の根を吐きつづけ
宇都宮敦子
柄杓星天にも春の水の音
甕 秀麿
雪割竹彈かれながら介錯す
佐藤山人
燕くる艇庫に太き南京錠
平野みち代
放牧の山麓とぎれ斑雪山
森田尚宏
花種の内緒話を聞きにけり
宮ア根
まだ右が残つてゐるさ春の鴨
山本無蓋
鬼浅蜊提げて浜つ子の友来たり
安井和恵
豹柄の初蝶に退く女かな
山本久江
春泥の我張りとかわく旅の靴
江澤弘子
城壁を掠むトロッコ木の芽風
藤沢秀永
二階より見ゆる桜を見に行かむ
三木千代
入学を祝す遠くに老いにけり
村上すみ子
合格や都落ちとは言つてるが
久米なるを
ラケットの笏を持つ子や雛遊び
島田喜郎


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